■CONCEPT

動く機能が社会を支える

高齢化社会、環境配慮型社会を迎える中で、縮小していく都市のデザインを考えています。
人口、施設を「中心」に集中させ、効率良いサービス提供を行うコンパクトな都市構造が目指される一方で、縮小していく「周辺」での豊かな暮らしを守っていくこと、さらには縮小する過程をデザインすることが必要となります。
「周辺」では、「買い物難民」をはじめ、日常生活を支える機能の欠如が大きな問題となっていますが、それに対し「機能を動かす」ことに着目しました。
人がいるところ、人が簡単に来られるところに機能を運ぶ。
頻度や時間など、変化していく地域のニーズに柔軟に合わせて機能を運ぶ。
さらには、運んだ機能によって、住民が自然と集まることのできる「都市空間」が生まれる。こうした柔軟で低コストな仕組みに可能性を感じています。
① 徒歩圏に生活サービスを:地域の歩いて来られる場所に、人々が必要とする機能を置くことで、こどもから高齢者まで誰でもサービスを受けることができます。
② 必要なサービスを守る:失ってはいけない施設も、統廃合等でアクセスが困難になってしまいます。それを動かすことで、頻度は減りますが、補完することができます。
③ 地域の変化に合わせる:郊外の住宅団地等では、高齢化や若い世代の流入が、一気に起こります。そうした地域の急激な変化にも、頻度や場所、サービスを変えることで、動く機能は対応できます。

たなカー

商品を載せる棚のある車、“たなカー”。日常生活に必要な商品の販売や、暮らしを支えるための医療、行政サービス、文化的な楽しみをもたらすものまで、様々な形で考えられるモバイル施設です。

ぷらっと

その“たなカー” が停車する場所“ぷらっと”。地域の誰でもぷらっと歩いて来られるプラットホームとなる空間です。

たなカー&ぷらっと

両者を連動させてデザインし、地域での暮らしを支えていく基盤を作ることを、これからの都市デザインの一つの形として提案しています。
“たなカー” がやって来て、まちかどにそっと機能を置く。
そこに目的が生まれ、人々がやって来る。
その器としての“ぷらっと” をまちかどにつくる。
地域の誰でも歩いて来られる場所に“ぷらっと”を作り、そこに様々な“たなカー” が来ることで、地域のニーズに合ったサービスを提供します。
同時に、地域の住民が自然と集まる空間を生み出すことが大きな狙いです。

「空き」をデザインする

縮小時代を迎えるこれからの都市には、たくさんの「空き」が発生します。
空き家や空き地、耕作放棄地。さらには住宅のガレージや庭。
こうした「空き」を資源として捉え、“ぷらっと”を生み出すことにチャレンジしています。
空き地が子どもたちの遊び場に。耕作放棄地が食育の場に。ガレージが習い事の場に。
また、リタイア世代が持つスキルや知識、地域で過ごす時間も魅力的な「空き」です。
さらに、これから在宅勤務が増えていくと、若い世代が地域で過ごす時間も長くなります。
通勤時間がなくなったことで得た空き時間を、何か地域で有効に活用できるかもしれません。
「空き」を拒むのではなく、「空き」を受け止めることで、縮小時代の豊かな暮らしが描けるのではないかと考えています。